• 代表取締役社長 森 雄一

2012年6月号(vol.38)


そこには何も無かった。本当に何も無かった。僅かに原形をとどめているもの、ここは一体・・・そうか、駅のプラットホームだ。今はもう線路すら無く、かつては賑わいを見せていたであろう駅周辺は、建物の基礎だけが剥き出しになり、ここに街が存在していたという面影すら無い。普段は人々を魅了する穏やかなコバルトブルーの海が、全てを呑み込む魔物へと豹変するなど、誰が想像できただろうか。

 

先月の週末を利用して、震災復興ボランティアのため岩手県大槌町へ赴いた。恥ずかしながら震災以来、初めての被災地入りで、報道では徐々に復興へと向かっているとはいうものの、未だに何も無いこの地に再び街が形成されるのだろうかと思うと、復興への道のりは果てしなく遠いことを実感した。

一人の力は微力だ。だが、それを結集すれば想像をはるかに超える力を発揮する。ゼロから、いやマイナスからの出発に心が折れそうになるが、今この世にあるものは全て人間の手により創られたもので、それだけの力が私たちにはある。自分に何ができるのだろうか、直接的であれ間接的であれ、逃げずに向き合うことだ。いつの時代も未来を切り拓くのは、今を生きる私たちの使命なのだ。

 

代表取締役社長 森 雄一

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